この記事は「避難生活での暮らし」と「尊厳」を守るサイトです。
今回は「災害時のトイレ支援」について解説します。
※免責とご注意
本記事は公式情報をもとに、執筆者の経験や調査を加えてまとめています。法制度・サービス・仕様などは変更される場合があります。必ず最新の公式情報をご確認ください。
災害時、食料や水と同じくらい深刻なのが「トイレの問題」です。
特に寝たきりや認知症の人がいる家庭では、排泄環境の悪化が健康や尊厳に直結します。
避難所でも在宅避難でも「行列」「不衛生」「プライバシーの欠如」といった課題に直面するため、
事前の準備と周囲の理解が欠かせません。
災害時、介護が必要な人の「トイレ問題」にどう備えるか
災害時、避難所や在宅避難では「トイレに行きにくい」不安から、水分をとることを控えてしまう人が少なくありません。
特に高齢者や介護が必要な方にとっては、水分を我慢すること自体が健康リスクになります。
- 脱水症状
- 便秘や尿路感染症
- 深部静脈血栓症・肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)
- 慢性疾患の悪化
こうしたリスクは「トイレ環境が不衛生」「長時間並ばなければならない」状況から生じるものです。
だからこそ、**「水は我慢しないで飲める環境をどう作るか」**が、災害時トイレ支援の大切な視点となります。
断水や停電で水洗トイレが使えない、避難所で仮設トイレに行列ができる…。
介護が必要な人にとって、これらは「待つ」ことや「我慢する」ことができず、命に関わるリスクになります。
特に高齢者は水分を控えてしまい、脱水症状を起こすケースも報告されています。
だからこそ「トイレ問題」は食料や水と同じく、災害時に最優先で考えるべき課題です。

寝たきりの人の排泄に起こることと備え
寝たきりの方は、自力でトイレに行けません。
そのため災害時には、以下のような困難が起こります。
- トイレまでの移動ができない
- 停電でポータブルトイレや照明が使えない
- 介助者が疲弊して介護が滞る
- 衛生管理が難しくなり、褥瘡や感染症のリスクが高まる
👉 これらを想定して、オムツ・ポータブルトイレ・防臭袋などを普段から備えておくことが大切です。

普段の介護での工夫については、在宅介護×トイレ支援|高齢者・認知症・寝たきりのケース別ガイド

認知症の人が排泄で混乱しやすい理由と工夫
認知症の方にとって、トイレ環境の変化は大きなストレスになります。
- トイレの場所が認識できない
- 音や臭いで不安になる
- 周囲の視線が気になる
- 恥ずかしさから「行きたくない」と拒否する

工夫の例
- 床に色付きテープを貼って「トイレへの道」をわかりやすくする
- ポータブルトイレに布カバーを掛け、家庭的な雰囲気にする
- ラベンダーなど穏やかな香りで安心感を出す
- 声かけは「一緒に行こうか」など、やさしく短く
災害時トイレ対策に必要な基本アイテム
- 大人用オムツ(テープ式・パンツ式)
- ポータブルトイレ or 簡易トイレ
- 防臭袋(BOSなど)
- 使い捨て手袋・防水マット
- 流せるおしりふき・トイレットペーパー
- アウトドア用ポップアップテント(オムツ交換用に有効)
👉 特にポップアップテントは「どこでオムツ交換するの?」という不安を解消してくれる強力な味方です。
目からうろこ!身近なもので代用する工夫
- ゴミ袋+新聞紙 → 簡易トイレ
- ラップ → 汚れ防止&使い捨てで洗濯不要
- 子ども用オムツ替えシート → 防水マット代用
- バスタオル → 敷物・目隠し・防寒にも使える万能布
- ジッパー付き大型ビニール袋 → 水と洗剤を入れてシャカシャカ振れば簡易洗濯
👉 「高い物がないと無理」ではなく、「あるもので代用できる」視点が大切です。
避難所で安心できる排泄空間づくり
避難所のトイレは「公共的で落ち着かない」「行きにくい」と感じる人が多いです。
認知症や寝たきりの人にとっては特に大きなストレスになります。
- 色テープで誘導ラインを作る
- 段ボールや毛布で仕切りを作る
- 「トイレです」と貼り紙を付けて安心感を与える
- 介助者は声を短く・はっきり・やさしく

周囲に理解を伝える声かけの工夫
避難所は「知らない人同士が隣で過ごす空間」です。
だからこそ、周囲に理解を得るための一言が大切です。
- 「認知症があって慣れない場所で混乱しやすいんです」
- 「急に声を出すかもしれませんが、ご理解いただけると助かります」
👉 たった一言で周囲の誤解や不安が減り、空気が柔らかくなります。
介助者や本人の安心感にもつながります。
家で暮らす事が出来なくなった場合、オムツ交換はどこでする?
- レジャーシート+毛布で簡易間仕切り
- つっぱり棒+カーテンで空間を仕切る
- 段ボールを立てて囲う
- 大判タオルや雨がっぱを体に掛けて目隠し
👉 「テントがないから無理」ではなく、あるもので工夫することが大切です。

災害に備えて準備しておきたいもの一覧
- 防水マット
- 使い捨て手袋
- ビニール袋・新聞紙
- 消臭スプレー
これを「緊急オムツ交換セット」として玄関に置いておくと安心です。
排泄ケアは「人としての尊厳」を守る行為
トイレは「ただの用足し」ではありません。
人としての尊厳を守る大切なケアです。
「大丈夫、一緒にやるから安心してね」と声をかけるだけで、本人にとっては大きな支えになります。


まとめ|「災害時トイレ支援」は家族で命と尊厳を守るケア
- 災害時、介護が必要な人にとってトイレは最大の課題
- 寝たきりも認知症も「備え」と「工夫」で安心できる
- プライバシーと尊厳を守ることが最も大切
👉 家族の安心と尊厳を守るために、今からできる準備を始めましょう。
🌸著者の一言
阪神淡路大震災のとき、自宅でなんとか寝ることはできましたが、今振り返れば避難所に行くレベルだったと思います。当時は知識もなく、もっと大変な人がたくさんいたので「まだましだ」と感じていました。とはいえ、生活の中で最も深刻だったのはトイレです。幸い残っていた風呂の水で流せましたが、自分のことだけでも大変なのに、寝たきりや認知症の方がいたら…と思うと本当に厳しい状況だったと想像します。災害はいつ起きるかわかりません。だからこそ、準備や想像をしておくことが大切だと、この記事を書きながら改めて感じました。

📚 出典

介護福祉士として13年。防災や終活にも関心あり。
在宅ワークを目指して、パソコン奮闘中の「さっちん」です!